法律知識「新型コロナウイルス 」
2020年05月17日 新型コロナウイルス
融資
1.資金と融資の考え方
経営の危機時期では資金の確保こそが最も重要であり、資金繰りで困っておられる方は「キャッシュ イズ キング」を強く実感されていることと思います。
その資金難を解消するためには、支出を減らして収入を増やすことに尽きるわけですが、すぐに売上を回復させることはできませんので、金融機関からの融資を検討することになります。
融資を申し込むかどうかは、資金がどの程度確保できているのか、このまま行くと資金が1か月しか持たないのか、3か月持つのか、6か月持つのかによってその判断が異なります。
資金が1か月しか持たないようであれば、直ちに融資を申し込むべきでしょう。
もちろん、後に説明するように元金据置(返済猶予)期間があるとはいえ返済が必要なお金ですので、将来の返済に不安がある場合には借入を躊躇することもあると思います。ケースバイケースではありますが、事業継続を諦めていない以上は、目先の資金をとにかく確保することが先決ですので、借入を考えざるを得ないのではないでしょうか。
一方、資金にある程度の余裕があれば、急ぎ融資を申し込む必要性は乏しいようにも思えますが、新型コロナウイルスの終息の時期や需要の回復時期がいつになるのかは非常に不透明ですから、ある程度資金の余裕がある企業においても、資金繰りの安定のため、融資を申し込んだり、金融機関の融資枠(コミットメントライン)の設定をしてもらうなどの対応も検討すべきように思います。
2.新型コロナウイルス関連の融資制度
新型コロナウイルスの影響を受けて資金繰りが悪化した企業のために国は様々な融資制度を設けています。この融資制度は主に売上高の減少を条件としていますが、経済産業省のウェブサイトには売上高の減少幅に応じた融資制度のメニューが整理されて掲載されています。
出典:経済産業省ウェブサイトhttps://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/shikinguri_list.pdf
状況に応じてこれらの融資制度を検討していくことになりますが、以下では、中小企業が主に利用を検討することになる、①日本政策金融公庫の実質無利子融資である新型コロナウイルス感染症特別貸付、②民間金融機関の実質無利子融資について説明します。
また、新型コロナウイルスに伴う融資制度以外にも、③民間金融機関の独自の融資があり、状況によってはこちらを申し込む場合もあります。
この①~③の融資の概要は下の図のとおりです。
【図】融資制度まとめ
①と②の融資の詳細は以下に掲載されていますのでご参照ください。
【①日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」】
◆日本政策金融公庫ホームページ
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_m.html
【②民間金融機関(実質無利子融資)】
◆金融庁・令和2年5月1日付け公表資料(民間金融機関における実質無利子・無担保制度の概要)
https://www.fsa.go.jp/news/r1/ginkou/20200501/21.pdf
◆岡山県ホームページ(新型コロナウイルス感染症対応資金)
https://www.pref.okayama.jp/page/662332.html
◆申込の流れ
出典:金融庁・令和2年5月1日付け公表資料(金融機関によるワンストップ手続きのイメージ)https://www.fsa.go.jp/news/r1/ginkou/20200501/22.pdf
日本政策金融公庫と民間金融機関の実質無利子融資は、金利が当初3年間無利子であること、元金据置期間が最長5年であることから、資金繰りの安定のためには非常に魅力的です。
ただし、そのために融資の申し込みが殺到しており、融資実行までにそれなりの期間を必要とするようです。したがって、早急に資金を必要とする場合は、これら実質無利子融資ではなく、民間金融機関独自の融資も検討することになります。
この点、民間金融機関からつなぎ融資を受け、その後に実質無利子融資を受けて借り換えることも可能となっています(つなぎ融資に関しては中小企業庁と金融庁の連名で要請が出ています。下記)。
このように、様々な融資制度がある中、融資額、金利、実行までの期間、返済期間など、自社にとって最適な融資制度が何で、それが利用できるのかといった点をメインバンクと十分に相談して決めるのがよいでしょう。
(参考)中小企業庁・金融庁 令和2年4月2 7 日付け「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を踏まえた資金繰り支援について(要請)https://www.fsa.go.jp/news/r1/ginkou/20200427.pdf
「中小企業庁においては、信用保証協会と既往取引のある事業者については、事業者の事業経営上の利益に鑑み、つなぎ融資を新制度などの保証付き融資で旧債振替することは画ー的に禁止せず、個々の実情を踏まえて判断することとしている。これを踏まえ、5月2日からの連休前の期間を含め、つなぎ融資等の資金繰り支援を積極的に実施すること。その際、つなぎ融資の実行前に信用保証協会と協議・調整を行い、信用保証委託申込書等の基本的書類の提出を行った上で、融資実行を行うこと
なお、保証付き融資に限らず、資金繰りが逼迫している事業者の事情を踏まえ、日本政策金融公庫等の融資実行や各種給付金の支給等までの間に必要となる、つなぎ融資等の資金繰り支援を積極的に実施すること。こうしたつなぎ融資の提供をはじめとした事業者の資金繰り支援においては、日本政策金融公庫等と密接に連携すること」
3.融資申込額
資金が必要だとして、いくらの融資を申し込むのがよいでしょうか。
現在の資金残高がいくらかがポイントになりますが、新型コロナウイルスの終息時期や需要の回復時期が予測できない状況からすれば、資金的な余裕は確保しておきたいところです。
その観点から、資金残高や業種業態にもよりますが、固定費の概ね半年から1年分を目安に融資を申し込むということが一つの考え方としてあり得ると思います。
4.融資期間・据置期間
日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付では融資期間が最大15年~20年、元金据置期間が最大5年、民間金融機関の実質無利子融資では融資期間が最大10年、元金据置期間が最大5年とされています。
融資期間と元金据置期間をどうするかはケースバイケースではありますが、 新型コロナウイルスの終息時期や需要の回復時期が予測できない状況からすれば、いずれも最大期間で申し込むというのがよいのではないでしょうか。
もちろん、申込み後の審査によって、融資期間、据置期間は希望通りにならないこともありますが、その点も踏まえて申込み時の期間設定は慎重に考えたいところです。
5.融資を早期に・確実に得るためのポイント
融資を早期に、確実に得るためにはどうすればよいのでしょうか。
個人的な見解ではありますが、ポイントと考えることを挙げてみます。
①メインバンクに早く相談し、一緒に計画を立てる
融資を含めた資金繰りは一義的には自社で検討することになりますが、これまで支援を受けてきたメインバンクにいち早く相談し、融資を含めた資金繰りについて一緒に考えるのがよいと思います。
融資制度について一番詳しいのは金融機関ですから、融資額、金利、実行までの期間、返済期間など、自社のニーズに最適な融資について相談しながら進めるのがよいでしょう。
その際には、自社の状況を数値とともに包み隠さず説明するのが望ましいでしょう。
②顧問税理士や顧問弁護士など自社のことをよく知っている専門家に相談する
自社の財務状況を身近で一番よく知っている顧問税理士にも早く相談しましょう。
顧問税理士が同席の上、メインバンクと融資も含めた資金繰り策を検討していくことで、自社にとって最善の融資、資金繰り計画をより導き出すことができるはずです。
資金繰りを考えていく上では税務面の検討も必要ですので、その点でも顧問税理士の関与は必須です。
また、メインバンクがない、メインバンクと意見が合わない、複数の金融機関の協調がとれないなど、金融機関との協議が上手く進まないケースもあります。
そのときは顧問税理士や、さらには顧問弁護士とも相談の上、融資を検討し、金融機関との協議に臨むのがよいでしょう。
顧問弁護士がいなければ、顧問税理士などに紹介してもらうことも検討しましょう。
③必要書類は早く・漏れなく揃え、不備のない申請をする
通常の融資に比べて簡素化されているとはいえ、融資の申込みには財務資料が必要です。
必要書類の準備自体は自社で完結しますので、自社または顧問税理士の協力を得て、必要書類を漏れなく早期に準備しておきましょう。
また、申請書類に不備があれば、その分融資実行も遅れますので、申請書類は十分にチェックした上で提出するようにしましょう。
基本的なことですが、書類の不備により実行が遅れるケースも意外とあるようなので、十分気をつけましょう。
6.既にリスケジュール中の企業の融資
問題となるのが新型コロナウイルスの影響を受ける前からリスケジュール(借入金の返済猶予)をしていた企業への融資です。
リスケジュール中の企業への融資は可能なのでしょうか。
リスケジュールをしている企業は資金繰りに余裕がなく融資のニーズは高いものの、反面、金融機関からの信用力が十分でないため、一般に新規融資は難しいとされています。
しかし、経済産業省のパンフレット(https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/shien-flyer.pdf)には、「新型コロナウイルス感染症特別貸付やセーフティネット保証、危機関連保証は、既に受けた債務の条件変更を行っていることだけを理由には支援対象から外れることはありません。」と記載されていて、リスケジュール中という理由だけで融資が拒否されることにはなっていません。
金融庁・令和2年4月20日付け新型コロナウイルス感染症を踏まえた金融機関の対応事例では、「 条件変更中・事業再生中の事業者について、従前からのメイン行としての事業性評価を元に事業継続は可能と判断し、新規融資を実行」した事例の紹介もあります(https://www.fsa.go.jp/news/r1/ginkou/20200420/01.pdf)。
そうは言っても、リスケジュールをしていない企業に比べれば融資へのハードルが高いことは間違いなく、新規融資を得るためには例えば以下のような項目を金融機関にしっかりと説明し、理解をしてもらう必要があります。
・売上が減少した状況(数値)、原因
・資金繰り状況、今後の見通し
・現状での資金繰り改善策、利益改善策
・将来の返済可能性
・金融機関の経済合理性(今破産するよりも事業継続した方が金融機関にとっても経済的メリットがある)
このような点を説明するため、ケースによっては経営改善計画を策定した上で、融資を依頼することもあります。
経営改善計画策定のためには専門家の協力が必要ですので、顧問税理士などの専門家に相談してください。
また、中小企業再生支援協議会の新型コロナウイルス感染症特例リスケジュールを活用して金融機関調整をした上で、融資を依頼するという方法もありますので、メインバンクや専門家と是非相談してみてください。
リスケジュールをしているというだけで融資を諦めるのではなく、金融機関や専門家に相談の上、色々な方策を探してチャレンジすることが大切だと思います。
当事務所は諦めずに頑張る経営者の皆さんを応援しています。リスケジュール中の企業も支援していますので、遠慮無く当事務所までご相談ください。